神戸光の村授産学園の概要

 

 1.目的

 

  (1)就職できなかった卒業生が就職を目指す教育施設

 

昭和40年代末から低落を続けた養護学校卒業生の就職率は、この教育の義務化でも歯止めにはならず、昨今では20%を割る学校が増えている。

原因は悪循環となった依存生活と過保護が自立心を損ない、問題を重度化させ、教師たちは教育の「つぼ」をとらえかねてきたことによる。

光の村ではこれを「生活による崩壊現象」ととらえ、「依存生活が壊した者を自立する生活で改める」ことにした。この点全寮制の学校は強い。あわせて耐性の弱い依存体質を、ねばり強い独立者の体質に変える「体育」と、「仕事」への参加・集中・持続の指導を気長く続ける。

光の村は既にこの方式で、就職できなかった養護学校卒業生の再教育施設(千葉光の村授産園・昭和63年開所)を作り、平均59%の就職率をあげている。神戸光の村授産学園はその西日本版である。

 

  (2)重度障害の人たちを自活へと進める教育施設

 

今までは生涯が保護・援助の対象になっていた知的・情緒的に重度の人たちも、光の村方式の教育で先ず体力が大きく伸びると、それにともない気力もつことがわかった。そこで平成8年度から「せんべい作り」の仕事を選んで指導を続けている。

歩き、走り、泳ぐという粗大運動に比べると、手先を細かく使う繊細な仕事は身に付きにくい。それは素質の問題もあるが、もっと大きな原因は、「できなくて当たり前、しなくて当たり前、してやって当たり前」という過去の暮らしにあることもわかった。つまり教育次第で自活へと行き着くことも夢ではないということである。

施設を作る地域から、こうした子供たちを光の村の学校に受け入れて、中・校・専と基礎教育を積み、この施設で仕上げ教育を行い、工場を作って生涯資金を稼ぎ、グループホームで仲間と共に自活する道を開きたい。

 

 

  (3)社会に生きる生活力の基礎を作る全寮制の教育

 

知的障害を持つ子供たちへの対応は、「あるがまま、なすがまま」が原則という考え方が強い昨今である。だが私たちは同意できない。

子供は水のような存在だからどう育つかは環境次第である。このことは昭和50年から10年間、自閉症、病的肥満症、心身症、重積発作のある者、精神病質の子供(医師の診断による)たちと共に暮らして確かめている。

家庭的な人員構成の寮を作って、「なるべく自力で、なるべく力いっぱい」という暮らしと運動を続けているうちに、全員が集団生活が可能なところまで育ったのである。

人間として当たり前の暮らし方が身に付くと、見かた、考えかた、行いかたも自然と当たり前になる。だがこの力は萎えやすい。過保護には特に弱い。弱いだけではなくすぐに化石になる。私たちはその化石をこの寮でもとに返し、「助けられて生きるから働いて生きる」へと方向転換をさせたのである。

私たちも「あるがまま、なすがまま」を一度は容認する。しかしその次からは彼らに本来の生き方を目指してもらう。可能性いっぱいの存在だと信じているからである。細胞まで依存色に染まっている時代の申し子たちを元の白布に返し、独立色に染めなおすには限界があるが、自活する暮らしへと取りつかせ、その道を生涯歩ませることで目的は達成できる。この人たちの自己実現の人生のスタートとして、私たちは全寮制の集団生活に固執する。

 

2.      開設するコースと定員

 

  (1)教育授産コース(15〜16名)

 

養護学校卒業生で就職できなかった者を毎年3〜4名入所させて、4年間を原則とする指導を行い就職へと進める。

 

  (2)生活授産コース(14〜15名)

 

重い障害を持つ養護学校卒業生で、参加・集中・持続の基礎指導を受けている者を毎年3〜4名受け入れて、自活に至る職能訓練を行う。期間は4年を原則とする。

 

 3.教育授産コースの職能訓練

 

 「木工」による作業療法・技能訓練

 

知的障害者の適職群に広く通用する技能を一職種で育てようとすれば、「木工」が最適である。幼児の教具・遊具を作る中で機能訓練・作業療法を行い、存在感を高め、就職・職場生活・職業生活に必要な社会意識も育てる。

日々の作業の自己評価から日当の計算も入所参加者で行い、自分の価値観を確かにする。

 

 4.生活授産コースの職能訓練

 

(1)せんべい製造における仕上げ作業の指導

 

少ない工程ではあるが、指腹でのつまみ・指先でのつまみ・手のひらでの押し等手先の器用さの基本動作がこの中にある。この訓練が進むと報酬が支給できるような生産・販売計画の元に運営する。

 

   (2)せんべいの量産体制に参加する基礎能力の指導

 

せんべいの仕上げ作業が確かに身につけば、「量産体制への参加」の指導にはいる。実習場へ量産型の初級機を導入し、製造工程の要所要所を正確にこなす専門職に育てる。卒業後は中級機・上級機へと進み、その働きで自活する。

 

 

 5.生活教育・作業療法としての作業種目

 

  (1)竹炭製造

 

地域の清流を守り、浄化するための竹炭を製造し、浄化装置を作って埋設する。地域の子供たちにも呼びかけて水棲動物を増やし、ホタル・メダカを養殖・放流し、神戸市の新名所にする。竹炭の材料は、地区が動物園のパンダの飼料をとった残りの幹の部分を使う。将来販売することを考えて商標登録の手続きを取った。「パンダの竹炭・たけずみ」である。

 

  (2)陶芸

 

敷地内の粘土で自分の食器・寮の装置品・生活用品を作って焼き上げる。

                         (第2期計画)

 

  (3)製パン

 

石がまを作ってパンを焼く、目的は「主食を作る」という生活教育、「手の機能訓練」という作業療法、地域のご婦人といっしょにパン作りをするという交流教育、こうした多目的のパン工場を作る。   (第2期計画)

 

 

 6.卒業後の進路

 

  (1)教育授産コースの者の進路

 

極力100%就職を目指すが、不可能な場合は光の村の自活工房(神戸以外の場合もある)を中心に自活へと進める中で就職への指導を続ける。

 

  (2)生活授産コースの者の進路−4年後の受け皿

 

「神戸光の村自活工房−当初は製菓部門。建物は既に神戸市内で用意しており、製品についても研究を続けている。紙器製造工場も作る計画がある。授産施設の分場として運営する。学校が続く限り就職できない卒業生は出る。このため京阪神山陽の工業地帯で適職を求め、下請けあるいは自主生産の工場を作る。綾部市に栗園を開いているが、黒豆・大納言等を栽培する。

 

 7.地域交流スペースとその目的

 

  (1)地域の子供たちとの交流

 

「淡河川をメダカ・ホタルの名所にする。」竹炭で浄化装置を作り、川の適所に埋設する仕事に参加する。水質を調べ、メダカ・ホタルの幼虫を交流スペースで養殖して放流する。ここで各自が養殖装置を作って持ち帰り、家族ぐるみで川を守り、新しい川を作る活動に参加する。

 

(2)   地域のご婦人との交流

 

「石がま」で、地域のご婦人方といっしょに自家用のパンを焼く。食用廃油で石けんを作る。竹炭で浄水器を作る等の活動で交流を深める。

 

  (3)近隣都市の知的障害児の在宅時間の有効な活用を図る

 

週休2日制が実施される。在宅時間がますます長くなる。この時間を有効利用するために、学園内へ交流スペース「おもちゃ館」を開く。ここでは親子合宿あるいは日帰りで「物作り、運動、生活指導」等の活動をする。指導には大学の障害児教育サークルの教授や学生が参加する組織を作る。「おもちゃ館巡回バス」を用意し、工作器材・運動機器・玩具類等を積み、公園・公営施設を利用して「出前おもちゃ館」を開く。